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その六

おばあちゃんのリネン

食器洗いは嫌いだ。だって、一生懸命に洗っても、思い通りのピカ
ピカにならないからだ。お皿やグラスを指でふれてキュッキュッと
小気味よい音がする。そんな洗い上がりを期待しているのだけれど、
粗品でもらったようなクロスで拭いているのが悪いのか、思ったと
おりには、きれいにならないのである。

ある日、押入の中を整理していたら、古めかしい茶箱が出てきた。
母に聞いてみたら「きっとおばあちゃんの形見の品が入っているん
でしょう」とのこと。おばあちゃんは10年前に96歳の天寿を全
うして天国に召されていった。生前、彼女が大切にしていたものが、
この茶箱に収められているらしいのだ。

茶箱のふたを開けてみた。くしや手鏡などといった化粧道具に混じ
って、5枚ほどの布巾が出てきた。生成りの無地、どうやらリネン
のクロスのようだ。隅のほうに、かわいいフランス刺繍がある。と
ころどころにシミがある。少しばかりカビっぽい臭いもしていた。
でも、これはおばあちゃんが大切にしていたリネンの布巾なのだ。

リネンは一生ものの繊維だ、という話をどこかで聞いたことがある。
丈夫でシミ抜きもできて、大切にすれば何代にもわたって使えると
いうのだ。そこで、リサイクルしてみることにした。シミはキッチ
ン用の漂白剤に2日ほどつけたらきれいに落ちた。そして、臭いも
すっかりなくなった。これなら、なんとかキッチン用クロスとして
使えそうだ。

思えば、ずっとリネンのキッチンクロスに憧れていた。素朴でやさ
しい風合いに魅せられていたし、吸湿性の高さもお気に入りだった。
雑貨屋さんに行くたびに手に入れようとするのだけれど、なかなか
踏ん切りがつかなかった。それが、棚から牡丹餅ではないけれど、
こんな風に手に入るとは思ってもみなかった。

おっくうな食器洗いを済ませ、さっそく、おばあちゃんのリネンで
食器を拭いてみた。いつもの粗品の布巾のように濡れた感触が残る
ことがない。でこぼこの部分もきれいに水分を拭き取ることができ
る。拭いても、拭いても、まだ水分を吸い取る余裕があるように感
じる。たしかにリネンは頼もしい限りだ。

いつもは、食器は水切りかごに伏せたままにして自然乾燥させてい
るのだけれど、今日はリネンクロスで拭いた後、すぐに食器棚にし
まった。それほど、水分をしっかり拭き取ることができたのだ。し
かも、グラスはピカピカ。指でふれるとキュッキュッと小気味よい
音がする。うん、はじめて味わう満足感である。

私が生まれるずっと前、おばあちゃんは、このリネンで食器を拭い
ていたのだろう。そして、今、孫の私がこのリネンでおばあちゃん
と同じように食器を拭いている。受け継がれるものがあるって、な
んて幸せなことなんだろう。おばあちゃんのリネンが、私を食器洗
い好きに変えてくれそうだ。

さて、いかがでしたか。次回もどうぞ、お楽しみに。
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